ビッグバン・ベイダーが語ったアントニオ猪木とのファイナルマッチの壮絶秘話。滴る血と汗に涙も混じった

  • 井木 康文 ●取材・文 text by Iki Yasufumi photo by 平工幸雄/アフロ

「その後は、猪木が逆襲する番だ。俺たちは場外に出た。早速、猪木が椅子を持ち出して俺の頭をぶん殴ってきた。脳天から血が流れる。やっとの思いでリングに戻ると、猪木が『俺を血まみれにしろ!』と檄を飛ばした。俺は、猪木の期待に応えるべく、精一杯の打撃を放つ。ついに猪木も流血した。ホラー映画の形相だ。猛烈にパンチ、キック、頭突きと猛攻を交わすうちに、血と汗が滴り、気がつくと涙も混じっていた。

血だるまのアントニオ猪木(左)を無理やり起こすビッグバン・ベイダー(右) (写真:平工幸雄/アフロ)血だるまのアントニオ猪木(左)を無理やり起こすビッグバン・ベイダー(右) (写真:平工幸雄/アフロ)この記事に関連する写真を見る
 見せ場は続く。俺はコーナーポストに登ると、ロープ2段目からベイダーボムを血だるまの猪木に浴びせた。さらに、最上段まで登ると、今度はトップロープから力いっぱいのベイダーサルトを連続してお見舞いする。猪木はすべてはねのけた。応酬の果てのエンディングは、猪木がボディスラムで俺を投げ、腕ひしぎ逆十字固めを極めると、俺からギブアップを奪って勝利を収めたのだった。

 前述の通り、この時、アントニオ猪木は52歳だ。14分を超える激闘を戦い抜き、色褪せることのない衝撃の戦いぶりを見せてくれた。最後の戦いができたことは、共に最高の喜びだ」

 最後まで無謀な提案をしたアントニオ猪木と、その"約束"を120%のパフォーマンスで実行したビッグバン・ベイダー。血と汗だけでなく涙が混ざっていたところに二人の関係性が垣間見える。ファンを震撼させた壮絶なラストマッチの裏には、両雄同士の強い絆があったのだ。

 自伝の中では、アントニオ猪木との思い出の他にも日米のレジェンドレスラーやプロレス団体の裏事情など、当事者ならではの目撃情報がリングパフォーマンス同様に遠慮をすることなく赤裸々に語られている。逝去してから3年が経っても、ベイダータイムは色あせない。

アントニオ猪木、ジャイアント馬場、三沢光晴など伝説のレスラーとの秘話も満載!
ビッグバン・ベイダーによる最初で最後の自伝

『VADER TIME ベイダータイム 皇帝戦士の真実 』(徳間書店)
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