「美しすぎるボクサー」と話題を呼んだ伊藤沙月。五輪を目指していた当時と自衛隊退官後の今を語る (4ページ目)

  • 石塚 隆●取材・文 text by Ishizuka Takashi
  • 村上庄吾●撮影 photo by Murakami Shogo

ボクシングを通じて自分らしさを認められるようになったという伊藤ボクシングを通じて自分らしさを認められるようになったという伊藤この記事に関連する写真を見る 競技の世界から社会へと出て行った伊藤は外資系の保険会社に入社し、1年間サラリーマンを経験する。そしてある日、大学時代にトレーニングでお世話になっていた、トレーニングジムの関係者に声を掛けられパーソナルトレーナーへと転身。現在に至っている。

「とてもやりがいのある仕事ですよ。今は一日に5人、多い時には8人くらいの指導をしています。とにかくお客様には、やる気になって、楽しい時間にしてもらえればなと思っています。もちろんトレーニングにボクシングを取り入れたいという方もいますし、選手時代に減量をしていたので痩せたいという方に私の経験をお話したりしています」

 現在もボクシング業界と完全に離れたわけではない。時間があれば興行を見に行ったり、コロナ禍が終息したら体調管理のためにジムに通おうと考えているという。

 あらためて伊藤にとってボクシングとは何だったのかと問うと、艶のある風情を漂わせ彼女は力強く言うのだ。

「昔は全然自分に自信が持てないというか、隣の芝生が青く見えてしまうというか......、他人と自分を比較してしまう人間だったんです。ボクシングを経験して、最近なのですが、ようやく自分に自信が持てるようになってきたんです。だからやっていてよかったなって。『自分は自分だ』って思えるようになったんですからね」

 そう語ると彼女は柔らかい表情で微笑んだ。

【profile】
伊藤沙月 いとう・さつき 
1991年、宮崎県生まれ。高校1年でボクシングを始め、2年時の全日本女子アマチュアボクシング選手権大会ライトフライ級Bで優勝。拓殖大学在学中にはロンドン五輪の強化選手に選出された。2015年に自衛隊体育学校に入校し、同年の全日本大会バンタム級で3位、16年には2位。18年に現役引退し、19年から東京・西麻布の会員制トレーニングジム『デポルターレクラブ』でパーソナルトレーナーとして活動している。

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撮影協力●ASICS Sports Complex TOKYO BAY(東京・豊洲)

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