「美しすぎるボクサー」と話題を呼んだ伊藤沙月。五輪を目指していた当時と自衛隊退官後の今を語る (3ページ目)

  • 石塚 隆●取材・文 text by Ishizuka Takashi
  • 村上庄吾●撮影 photo by Murakami Shogo

現役のボクサーだった2012年以来、9年ぶりにスポルティーバの取材に応じた伊藤現役のボクサーだった2012年以来、9年ぶりにスポルティーバの取材に応じた伊藤この記事に関連する写真を見る 高校を卒業すると彼女はボクシングの名門である拓殖大学へ進学。さらにその後、エリートアマチュアボクサーを育成する自衛隊体育学校に入学する。目標はアマチュア最高峰である五輪出場だった。

「シンプルにオリンピックに行きたいというのが当時のモチベーションでしたね。だからボクシングを極めたいと思って拓大と自衛隊へ進んだんです。特に自衛隊の練習はきつかったですね。普段のトレーニングしかり、日常生活から大変でした。訓練を受けるわけではないのですが射撃検定を受けたり、また、集団生活なので連帯責任や団体行動をあらためて学んだり。大学時代はひとり暮らしだったのが、4人部屋になりましたから。みんな、私より5歳ぐらい下でしたし(笑)」

 拓大時代にはロンドン五輪の強化選手に選ばれ、自衛隊に入隊した15年に全日本大会バンタム級で銅メダル、さらに翌16年全日本大会同級で銀メダルを獲得した。実力はあるものの、結局、万人が納得する結果を出すことができず、ブレイクスルーを果たせずに、18年に自衛隊を退官すると、約10年にわたり続けてきた競技から身を引いた。

「退くといった感じではなく、本当はちょっと休みたいなと思ったのがきっかけだったんです。少し距離を置こうって。そうしているうちに戻れなくなってしまったのが正直なところなんです」

 どんなスポーツでもそうだが、やりきった満足感を得て引退できるのはひと握りの人間だけである。ましてや過酷な格闘技の世界、一度切れた糸をつむぎ直すのが困難だったのは想像に難くない。またプロへの転身は考えなかったのか、という質問に彼女は「タイミングと縁がなかった」と答えた。

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