「そんなことしていいの?」。赤いベルトを持つ林下詩美がさらに強くなるための課題 (3ページ目)

  • 尾崎ムギ子●文 text by Ozaki Mugiko

数々のタイトルを獲得してなお、進化を遂げていく(写真/「スターダム」提供)数々のタイトルを獲得してなお、進化を遂げていく(写真/「スターダム」提供)この記事に関連する写真を見る 今年4月4日、大田区総合体育館大会で、林下は"最強外国人選手"と呼ばれるビー・プレストリーと対戦。激闘の末、赤いベルトを防衛した。

「ビーは体も大きいし、力も強いし、試合中の発想もすごい選手。私が初めて赤いベルトに挑戦した時の相手がビーで、その時は惨敗したんですけど、再戦してみてやっぱりものすごく強くて、勝った私がボロボロになったくらい攻め込まれました。同じユニットの時はよく一緒に遊んだりして、思い出もたくさんある選手。そのビーと全力を出し合って闘えたのはすごく楽しかったですね」

 試合前、ビーは林下のことを「ショッパイ」と言っていたが、どう感じていたのか。

「シンプルに腹は立ちますが、ビーは本当にすごい選手なんだから、そんなつまらないことを言わないで、堂々と強くカッコよくしてればいいのになあと思っていました。『そう言うことで、ビーがしょっぱくなっちゃうよ』って」

 ビーは試合後のマイクで、突然「スターダム、ラストマッチ」と宣言。渡辺桃をリングに招き入れ、「I love you, Utami. I love you, Momo」と泣きながら2人を抱き締める姿は美しく、客席のあちこちからすすり泣きが聞こえてきた。

「これから先、ユニットは違うけれどお互いどんどん高め合っていける選手だと思っていたのに、急にラストマッチと言われてしまって......。あの試合が最後になってしまったのは本当に悲しかったです。最後の相手を務められたことを誇りに思って、ビーの分までこれからも赤いベルトのチャンピオンとして頑張らないといけないと思いました」

 最強外国人選手であるビーを倒し、赤いベルトの価値はさらに高まった。「世界の林下詩美」という意識も強くなったというが、プレッシャーはないのだろうか。

「みんなに『いつも余裕そうだね』って言われるんですけど、プレッシャーは感じるほうなんです。リングを降りたらいろんなことを考えちゃう。だけど、『私なんて......』と思っているようなプロレスラーは強くなれないと思うし、自分がファンだったらそんなレスラーを応援したくない。リング上ではとにかく『私が世界で一番。強くてカッコいい!』と思って闘うようにしています。お客さんの前では、弱い自分は見せたくない」

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