闘魂三銃士が生んだブームと混乱。藤波辰爾は真夜中のファミレスにどん底だった橋本真也を呼んだ (3ページ目)

  • 松岡健治●取材・文 text by Matsuoka Kenji
  • photo by Tokyo Sports/AFLO

 会った場所は、2人の自宅に近い東京・稲城市内のファミリーレストランだった。

「真夜中に会ったから、店にはほとんどお客さんがいなかったんじゃないかな。最初は復帰の話はせず、いろいろ雑談をしながら彼の気持ちをほぐしていった。その後も何度かファミレスで会って、頃合いを見計らって復帰の話を切り出しました。

 確か、『いつまでもリングから離れていても仕方ないじゃないか』と言ったと思います。リングに上がらない限り、小川にやられた汚名をすすぐことはできないですし、何よりも早く戻ることが大切だと思っていたので。時間が長くなればなるほど、周りの視線は厳しくなりますからね」

 藤波の説得に応じた橋本は、6月8日、日本武道館での天龍源一郎戦で5カ月ぶりに復帰する。

「その時、橋本に『他の選手と顔を合わせたくないから、控室を別にして、ひとりにしてほしい』と言われたことをよく覚えています。心情はよくわかったので、そのとおりにしました」

 第一線に「破壊王」が戻ってきた......と思われた矢先、橋本は10月11日の小川との再戦に敗れ、翌2000年4月7日のリベンジ戦でも負けてしまう。この試合は、テレビ朝日がゴールデンタイムで「橋本真也34歳 負けたら即引退!スペシャル」と銘打って中継したため、橋本の進退が窮まる事態となった。

 橋本は新日本に辞表を提出。再び復帰の説得をすることになった藤波は、「俺が相手をするから」と再起初戦の相手を務めることを条件に出した。

 そして2000年10月9日、東京ドームで対戦する。結果はチキンウイングアームロックで橋本の勝利。当時は社長業に力を入れている時期で、試合もスポット参戦にしていたが、それでも迷わず体を張った。

「練習も満足にできず、体調は最悪でした。ただ、自分としては『橋本をリングに戻せただけでもよし』という心境でした」

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