山口香が語る「わきまえない」発言が必要な理由。選手時代の苦い思い出 (3ページ目)

  • 村上佳代●取材・文 text by Kayo Murakami

スポーツで培ったものをビジネスに置き換える

遠藤 アスリートのなかには現役の時は結果を出せても、その後のキャリアでうまくいかないケースも多いですよね。山口さんのようにステージを変えながら次々と高い壁を越えていくのは簡単なことではないと思いますが、普段、若いアスリートにはどのようなアドバイスをしていますか?

山口 スポーツが好きで実績があるとしても、引退後もそれを生業にしてやっていける人はほんのわずかです。スポーツの場合は選手としてどんなに頑張っていても、いつか必ず終わりがくる。だから、選手は終わりがあるということを常に意識しておく必要があるし、辞めたあとに自分がどうやって生きていくかを考えておかなければいけません。

遠藤 スポーツの経験をビジネスに生かすにはどうすればいいと思いますか?

山口 スポーツに直接関わる仕事ができればラッキー、関わることはないとしても、スポーツをとおして得た経験や知見はどんな職業を選んだとしても生きてくると思います。そのことを証明するのがスポーツの意義や価値を高めることにつながる。そんな意識をトップアスリートには持っていただきたいです。

遠藤 スポーツの世界で培われた経験やマインド、スキルがあれば、ほかの世界でも活躍できるわけですね。

山口 自分の専門競技で解説ができるのは当たり前のこと。大事なのは、培ってきた経験や知識をビジネスや社会の何かに置き換えてどう応用して、どんな発信や行動をするかだと思います。それができなければ、スポーツの社会への影響力がまったくないことになってしまう。

遠藤 昨今、柔道の朝比奈沙羅選手やラグビーの福岡堅樹選手が医学部に進学するなど、それまで培ってきた経験を生かしながら自分のキャリアデザインを描いて世界を広げていくトップアスリートも出てきています。すごくいい流れに見えますが、山口さんはそうしたアスリートを見てどう思いますか?

山口 私が現役だった時代に欧米では当たり前だったことが、ようやく日本でも一般的になってきたのかなと思いますね。ロールモデルがあれば次に続く人が出てきます。一度は競技を選んだとしても、その後自分のキャリアを考えて大学や大学院に行くような動きが、日本でも加速していくことを期待したいですね。

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