「美」の丸山城志郎か「剛」の阿部一二三か。東京五輪出場をかけた世紀の決戦 (2ページ目)

  • 柳川悠二●文 text by Yanagawa Yuji
  • photo by AFP/AFLO

 そこに現れたのが阿部より4歳上の丸山だった。もともと実力者だったがケガで離脱していた時期が長く、阿部の後塵を拝していた。2018年のグランドスラム・大阪、2019年の選抜体重別、そして東京世界選手権と阿部に3連勝して世界王者まで上り詰めたところで、両者の立場は逆転した。

 丸山は昨年11月のグランドスラム・大阪で優勝すれば、東京五輪の代表に内定するはずだった。ところが、決勝で阿部に支え釣り込み足で倒され、さらに今年2月のグランドスラム・デュッセルドルフは古傷の左ヒザ靱帯を損傷して欠場。この大会を阿部が制したことで、両者の立場は横並びとなった。

◆丸山城志郎と阿部一二三の交差する想い>>

「スタミナの面では丸山選手に一日の長があり、試合時間が長引けば長引くほど、丸山選手に勝機が生まれると思います。しかし、ワンマッチということもあって、阿部が試合開始からフルスロットルで向かっていくでしょう」

 代表決定戦を前にそう予想したのは、阿部が小学生時代から通った神港学園の信川厚(のぶかわ・あつし)総監督だ。短時間での決着なら阿部、長期戦となれば丸山。それが大方の予想である。

 一方で、丸山に対して辛辣な言葉を投げかけるのは、丸山の父であり、92年バルセロナ五輪65キロ級代表だった丸山顕志氏だ。

「阿部選手は身体能力が高く、体幹が強い。城志郎が阿部選手に勝った試合は、ほとんどがゴールデンスコアまでもつれ、"指導"による差で決着がついた。私から言わせれば、内容で勝っていた試合は一度もない。城志郎は阿部選手に勝てないと思います」

 通常、トーナメントで争われる柔道の試合にあって、ワンマッチは異例中の異例だ。

 試合時間は4分。本戦で決着がつかなければ、時間無制限の延長戦(ゴールデンスコア)に突入する。柔道のスタイルは180度異なるものの、五輪切符を賭けた世紀の一戦は柔道の魅力が凝縮された至高の時間となるはずだ。

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