井上尚弥はなぜ「世界2位」なのか。PFP選考委員が考える1位との差 (3ページ目)

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by Kyodo News

 上記の意見でも明白なとおり、4階級で活躍してきたカネロの戦歴は多くの選者から支持を受けている。2018年9月にゴロフキンに初黒星をつけ、昨年5月にはダニエル・ジェイコブス(アメリカ)、11月にはセルゲイ・コバレフ(ロシア)といったビッグネームを連破した。

 2018年にドーピングで出場停止処分を受けたこと、ビッグファイトでは微妙な判定での勝利が多いといったマイナス材料もあり、毀誉褒貶(きよほうへん)の激しい選手ではある。それでも、これだけ質の高い相手と戦い続けていることを無視するのは難しい。

 それに比べ、井上がこれまでに下した中で世界的なビッグネームと呼べるのは、ノニト・ドネア(フィリピン)、オマール・ナルバエス(アルゼンチン)くらい。いわゆる"Eye Test(表層の能力評価)"では最高級だとしても、現状での戦歴ではカネロに劣っているとみなされるのは仕方あるまい。順位をひっくり返すために、井上にできるのは強敵を相手に戦い続けることだろう。

「井上にはWBO王者ジョンリエル・カシメロ(フィリピン)、WBC王者ノルディーヌ・ウバーリ(フランス)対ドネアの勝者と対戦してほしい。彼がバンタム級を統一するのを見てみたいし、そうなればパウンド・フォー・パウンドのNo.1になるかもしれない」

 そんな『リングマガジン』のダグラス・フィッシャー編集長の指摘どおり、バンタム級の統一戦路線を完遂することは強烈なアピールになる。今後、井上の試合がすべてESPN系列で全米中継されるのも大きい。そこでも圧倒的な形で勝ち進めば、世界の頂(いただき)への道筋が見えてくる。

 また、今後のカネロの戦いぶり次第で井上が浮上する線もある。11月6日、ゴールデンボーイ・プロモーションズとの別離を発表したカネロは、ミドル級を卒業してスーパーミドル級以上で戦うことになりそう。昨秋にはキャリア晩年のライトヘビー級王者・コバレフにKO勝ちしたとはいえ、スーパーミドル級、ライトヘビー級で戦い続ければ、サイズで上回る相手に苦戦する試合も増えてくるだろう。

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