「つないだ手は離さない」。ボクサー栗生隆寛を引退まで支えた父の思い (3ページ目)

  • 水野光博●取材・文 text by Mizuno Mitsuhiro
  • photo by AFLO


 小学4年生の時、『将来の夢』をテーマに作文の宿題が出ると、粟生は原稿用紙にたった一行「ボクシングで世界チャンピオンになりたい」と書いた。大きく残った余白には、チャンピオンベルトの絵を描いた。「作文をズルするためだったんですけどね」と、粟生は少し恥ずかしそうに笑う。

「憧れていた川島郭志さんがWBC世界スーパーフライ級王者だったんで、WBCのベルトを描いたんです。ただ、世界チャンピオンになりたいと思っていましたけど、本当になれるとは思えなかった。野球少年がプロ野球選手に憧れる感覚に近かったと思います」

 しかし、夢への距離は加速度的に縮まっていく。

 粟生は中学生になると、各県のインターハイ代表選手も多く参加する名門・習志野高校ボクシング部の合宿に参加するようになる。そして、中学生ながら各県のインターハイ代表選手を倒すことも多かった。

 二人三脚で練習に励んでいた粟生親子の関係に大きな変化が訪れたのは、粟生が習志野高校に進学した時だった。

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