「面白い試合をしてナンボ」のカッコよさ。
桜庭和志伝説は50歳の今も継続中

  • 佐瀬順一●取材・文 text by Sase Jun-ichi
  • 長尾迪●撮影 photo by Nagao Susumu


 それは、まだルールや階級がきっちり整備されておらず、総合格闘技(MMA/ミックスド・マーシャル・アーツ)というよりはバーリ・トゥード(何でもあり)だった時代に、"面白い試合"をすることでファンを増やしていった点だ。

 バーリ・トゥードはどうしても、殴り合い・蹴り合いがベースで野蛮なイメージがある。だが、桜庭の試合では、モンゴリアンチョップやフットスタンプが飛び出す。

 もちろん、ふざけてやっているわけではない。桜庭なりに相手の意表を突いた戦術のひとつだ。

 だが、桜庭は動きの少ない膠着状態が多い試合をよしとしない。守りに入る試合をするくらいなら、自分から動いていってKO負けするほうが試合としては面白いと考えるタイプだ。

 私はホイス戦の前に、桜庭の自伝『ぼく。』の制作を通じて、桜庭のプロ意識や考え方にたくさん触れることができた。もちろん桜庭だって、プロレスと総合格闘技が同じものとは思っていない。しかし、面白い試合をしないとお客さんは喜ばないし、プロである以上はお客さんが喜ぶような試合をしてナンボという部分は同じなのだ。

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