「桜庭和志って誰?」から一躍人気者へ。PRIDEはそのキャラを売りにした (6ページ目)

  • 佐瀬順一●取材・文 text by Sase Jun-ichi
  • 長尾迪●撮影 photo by Nagao Susumu


 それまでの総合格闘技は、どうしても「寝技が地味」というイメージがあった。だが、このような丁々発止のやり取りや絵に描いたような勧善懲悪の図式は、一般メディアでも取り上げやすいキャッチーさがあった。

 また、当時あまり"売り"がなかったPRIDEとしても、ここぞとばかりに桜庭のキャラを猛プッシュ。その結果、メディアへの露出やマスコミからの取材も山のように増えていったのだが、もともと面倒くさがりの桜庭は、そのストレスをホイス戦にぶつけようとモチベーションに変えていった。

 桜庭はそんな忙しい合間を縫って、キッチリと自伝を書き上げてくれた。書名は『ぼく。』に決定。これは桜庭とライターさんが話をしている時、桜庭が自分のことを「ぼく」と言うのがすごく印象的だったからだ。

 プロレスラーが自分のことを指す一人称は、たいていが「おれ」だ。だが、「ぼく」はふんわりした桜庭のイメージにもバッチリ合ったし、インパクトもあった。

 急ピッチで制作を進めた結果、初の自伝『ぼく。』は、桜庭vsホイスが行なわれる2000年5月1日に東京ドーム付近の書店で先行発売されることになった。これで、完全に舞台は整った。

(第3回につづく)

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