コロナはプロボクサーへの影響も大。それでもブレないひとつの想い (5ページ目)

  • 水野光博●取材・文 text by Mizuno Mitsuhiro
  • 村上庄吾●写真 photo by Murakami Shogo

 試合がいつ開催されるともわからなくとも、その日にベストな状態で迎える努力を惜しまないというスタンスを、永田は変えるつもりはないという。それには理由がある。

「ボクシングで、今の暗い世の中に少しでも明かりを灯せれば」

 永田はチャンピオンになること以外にもうひとつ目標がある。それが、ボクシングを通して、誰かのためになることをしたいということだ。

「僕は全日本社会人選手権を獲ったあとに肘の手術をして入院しています。その時、今後は自衛隊体育学校にはいられない、要は選手外通告を受けました。大袈裟に聞こえるでしょうが、オリンピックに出場することがすべてだった僕からしたら、それは死刑宣告も同然で。これから何のために生きていけばいいかわからなくなってしまった。入院中で時間だけはあったので、自問自答をずっと繰り返し、出てきた答えがボクシングを通じて、誰かのためになることをしたいということでした」

 だから永田は、タイトルマッチに勝つことと同等、もしくはそれ以上の価値を見出している。

「今後、試合ができるような日常が帰ってきたとしても、これだけ社会、経済がダメージを受け、これからどうしたらいいんだろうと途方に暮れる人で溢れると思うんです。そんな人が深夜に偶然テレビをつけた時、僕の試合が流れていたら。『この選手、なんかすげー頑張ってるな』って思ってもらえる試合をしたい。もしも、『俺もちょっと頑張ってみようかな』って、ひとりでも思ってもらえたら。そう考えると、準備不足で中途半端な試合をすることはできません」

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