比嘉大吾、669日ぶりのリング。支えた長谷川穂積と内山高志の助言 (2ページ目)

  • 水野光博●取材・文 text by Mizuno Mitsuhiro
  • photo by Jiji Photo

 その処分は2019年9月に解除されていたものの、ここまで復帰が伸びた理由のひとつは、比嘉が"闘う理由"を探していたからだった。

 この日の試合後、比嘉は「18歳で東京に出てきて、世界王者になろうと思った気持ちは薄れている。自分のためにがんばろう、やりたいという意思はなかった」と告白している。

 プロを志した瞬間から、ボクサーは世界チャンピオンになることを夢見る。しかし、その夢を叶えた瞬間、新たな夢を見つけなくてはいけない。

 王者として防衛を続ける最中ならば、余勢を駆ることもできるだろう。しかし、一度王座から陥落すれば、返り咲くために自身を奮い立たせることは困難を極める。

 世界チャンピオンになるよりも、世界チャンピオンに返り咲くほうが難易度は高いと言ってもいい。空白の期間、比嘉はモチベーションを、闘う理由を探し続けた。

 1年10カ月、試合から遠ざかっていた比嘉が、口癖のように、そして少し寂しそうに言っていたことがある。

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