井上尚弥に不敵な挑戦状。キューバのベテランが「怪物狩り」を宣言 (3ページ目)

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by Kyodo News

 WBAからスーパー王者に認定されている井上には、いわゆる"セカンダリータイトル"を保持する選手と戦う義務はない。ほかに優先事項があるのであれば、リゴンドーとの早めの対戦に動く理由もないだろう。

 加えて、井上のアメリカでのプロモーターとなったトップランク社のボブ・アラムが、リゴンドーを毛嫌いしていることも忘れてはいけない。2010年代前半にアラムと契約していたリゴンドーは、トップランク社の興行で凡戦を連発。百戦錬磨のアラムをして、「客を喜ばせる気がない選手はプロモートのしようがない」とよく嘆いていた。

 さらに2013年には、トップランク社が軽量級のスターに育て上げたドネアとの対決で、リゴンドーは完勝してしまった。手塩にかけていたフィリピンの雄に黒星をつけられ、アラムが地団駄を踏んだのは言うまでもない。ソリス戦後、リゴンドー は「アラムは、自分の選手を私と対戦させたら何が起こるか、もうわかっているはずだ」と挑発していたが、その言葉にはそんな背景があったのだ。

 2017年、新たにトップランク社のエースになったワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)がリゴンドーに完勝し、アラムはようやく溜飲を下げた。それでもこのキューバ人ボクサーに対する苦々しい思いは消えてないはずだ。

 リゴンドーは、今ではトップランク社のライバルプロモーターであるPBCと契約しているが、代理人のアル・ヘイモンが、39歳のバンタム級選手のレンタルを執拗に拒むとは思えない。それでもトップランク社は、これから新スターに育てようという井上に、仇敵をわざわざぶつけようとは思わないだろう。

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