リオ五輪の金、銀メダリストが涙。レスリング東京五輪への道は超熾烈 (2ページ目)

  • 宮崎俊哉●取材・文 text by Miyazaki Toshiya
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 肩を痛めて本来の調子からは程遠い状態で臨んだ6月の全日本選抜選手権。終了間際の逆転で勝利は掴んだものの、世界選手権では3回戦で敗れて5位。ただ、オリンピック出場権はなんとか死守したため、今大会で優勝して代表内定を勝ち取る予定だった。

 ところが、初戦から土性は高校生相手に大苦戦する。そして準決勝では、復帰した伊調馨のスパーリングパートナーを1年間務めてきた20歳の森川美和(日本体育大)に完敗。試合後は「頭では『タックルに入ろう』と思っても身体が動かない。なんでだろう......」と肩を落とした。

 68キロ級のオリンピック出場権はすでに日本が獲得しているため、誰が国内の代表に選ばれるかは2月1日のプレーオフで決定する。果たして土性は、森川にリベンジすることができるだろうか。

 その一方で、東京オリンピックへ向けて明るい材料もある。それは、若手の台頭だ。

 準決勝で登坂を撃破した20歳の須崎は、決勝で入江も破って優勝。試合は2-1と僅差の判定だったが、6分間の息詰まる大熱戦を見事に制した。

 7月の世界選手権・代表決定プレーオフで敗れたあとも決してあきらめず、入江が世界選手権で代表内定を逃す「0.01%の可能性」を信じ、日々タックル練習を繰り返してきた。その結果、須崎の手が決勝の舞台で高々と掲げられた。

 男子では、フリースタイル65キロ級の乙黒拓斗(山梨学院大)も輝きを放っていた。

 2018年、乙黒は日本男子最年少19歳10カ月で世界選手権を制覇。しかし、連覇の予想された今年の世界選手権はケガの影響もあり、メダルに届かず5位に終わってしまった。

 それでも、「判定に一喜一憂せず、常に冷静でいられるよう、メンタルも鍛え直して」臨んだ今大会、乙黒は1回戦から圧倒的強さを見せる。まったく危なげない試合で勝ち上がり、決勝戦でも見事なフォール勝ち。東京オリンピック代表内定を掴み取った瞬間、乙黒は思わず雄叫びをあげた。

 また、2歳年上の兄・乙黒圭祐(自衛隊体育学校)も、フリースタイル74キロ級の決勝で高谷大地(自衛隊体育学校)を破って優勝を果たした。その結果、今年の世界選手権で5位入賞してオリンピック出場権を獲得したにもかかわらず今大会1回戦負けを喫してしまった奥井眞生(自衛隊体育学校)と、2月1日にプレーオフを行なう。それに勝てば、兄弟同時オリンピック出場となる。

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