2019.09.26

井上尚弥に最大級の賛辞を贈るドネア。
それでも「多くの欠点がある」

  • 杉浦大介●取材・文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by Kyodo News

――あなたはフライ級からフェザー級までの5階級を制覇しながら、WBSSに参加するために、30代半ばにしてバンタム級に戻ってきました。減量は厳しくないですか?

「体重調整はまったく問題ではないんですよ。フェザー級では小柄でしたし、サイズで上回る相手との戦いにやりがいを見出していました。井上が上がってきたことで、バンタム級での戦いも”新たなチャレンジ”と考えられるようになり、また階級を下げたわけです。WBSSのオファーが来たときも、参加の決断をすることは容易でした」

――ボクサーとしては、ほぼすべてを手にしてきたと思いますが……

「(質問を遮るように)まだ手に入れていないものがあるんです。5階級制覇、複数回のタイトル奪取、年間最高KO、年間最高ファイターなど、あらゆるものを手にしてきましたが、まだ全4団体の統一王者になったことがない。その称号を、バンタム級で得たいと考えています。

 それもあくまで、モチベーションのひとつですけどね。私が戦い続けるのは、ボクシングを愛しているからです。4団体統一王者になったら満足して引退するということではなく、体が許す限りボクサーであり続けたいと思っています。将来、『あの時、あと数年戦っておけばよかった』とは思いたくないですから」

――引退を意識したことはないんですか?

「(2012年10月の)西岡利晃(帝拳ジム)戦の後には、『ボクシングはもう終わりだ』と感じました」

――西岡戦は、傍目には相手を圧倒してのKO勝ち(9回TKO)に見えましたが、後に「精神的に疲れるファイトだった」と話していましたね。

「チェスのようなファイトでしたからね。西岡は後に『ドネアが常に一歩先を行っていた』と話していたと記憶していますが、それができたから、私は主導権を握ることができたのでしょう。しかし、西岡は特筆すべきボクサーで、いまだにリスペクトしています。あの勝利はすごく満足できるものだったので、試合後に『もう終わりでいい』と感じたのでしょう」

――実際にはその後も戦い続けるわけですが、引退を決めなかった理由は?

「(西岡戦後の)ホルヘ・アルセ(メキシコ)戦、ギレルモ・リゴンドウ(キューバ)戦は、高額のオファーをもらったという側面がありますが、当時はやる気がなく、リングに立ちたかったわけではなかったんです。しかし、リゴンドウに(判定で)敗れた後に、まだ戦い続けたい、勝ち続けたいと思う自分がいると気づきました。その後、どうすれば元の位置に戻れるかを考え、数年が必要でしたが、今ではそこに戻ってこれたと信じています」