日本レスリングに陰り。王国復活へ
強化が必要も現体制は問題山積だ

  • 宮崎俊哉●取材・文 text by Miyazaki Toshiya
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 一方、出場枠を獲得しながらも内定持ち越しとなったのは、5位に終わったフリースタイル65キロ級の乙黒拓斗(山梨学院大)と、同5位だったフリースタイル74キロ級の奥井眞生(自衛隊体育学校)だ。12月の全日本選手権で優勝すれば内定となり、同大会で敗れた場合は優勝者とプレーオフを行なう。

 出場枠を獲得できなかった階級は、来年3月以降のアジア予選と2度の世界予選でオリンピックを目指すことになる。グレコで最も予選突破の可能性が高いのは、リオ五輪のグレコローマンスタイル59キロ級で銀メダルを獲得した太田忍(ALSOK)だろう。

 太田はリオ五輪後、文田と壮絶なライバル争いを繰り広げてきた。国内予選で文田に敗れたため、今大会は63キロ級にまわって出場したが、世界の強豪を相手に圧倒的な強さで優勝した。

 東京オリンピックに出場するためには、オリンピック階級である67キロ級へのさらなるアップを余儀なくされる。6月の全日本選抜選手権まで戦っていた60キロ級から7キロもの増量となるが、それでも太田ならやってくれるだろう。所属するALSOKの大橋正教監督も、「追い詰められた時の太田の爆発力にかける」と力強く語っていた。

 一方、男子フリースタイルは厳しい結果となった。

 井上健二・男子フリースタイル強化委員長は、「2017年から2年連続でメダルを獲ってきましたが、今大会はひとつも獲れずに残念。大敗です」と総括した。65キロ級の乙黒はリオ五輪57キロ級銀メダリストの樋口黎(日体大助手)と、74キロ級の奥井は藤波勇飛(ジャパンビバレッジ)と、それぞれ世界選手権代表決定プレーオフを戦ったライバルと全日本選手権で再戦することになるだろう。

 出場枠を逃したフリースタイルの階級では、57キロ級の高橋侑希(ALSOK)と86キロ級の高谷惣亮(ALSOK)に期待したい。高橋は2017年の世界選手権を制し、2018年も銅メダルを獲得した日本男子フリースタイルのエースだ。高谷は86キロ級にアップして1年足らずだが、国内で抜きん出た強さを見せている。アジア予選で過去2回、オリンピック出場権を獲得しているベテランが、「4年に一度」の泥臭い強さを発揮するに違いない。

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