米識者たちも確信する井上尚弥の絶対勝利。
WBSS優勝へ死角はない

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by Kyodo News

"モンスター"が間もなく英国デビューを果たす。

 現地時間5月18日、スコットランドのグラスゴーでワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)バンタム級の準決勝が催され、WBA同級王者の井上尚弥(大橋ジム)がIBF同級王者エマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)との一戦に臨む。

グラスゴーで公開練習を行なった井上グラスゴーで公開練習を行なった井上 WBSSでは優勝の"大本命"と目されてきた井上だが、26歳のロドリゲスも19戦全勝(12KO)という戦績を持つ強豪。破竹の快進撃を続けてきた井上にとって、「キャリア最大の難敵」と言えるかもしれない。

 ボクシングファン垂涎のこの一戦を、アメリカの記者たちはどう見ているのか。そして、彼らは井上の今後にどんな期待を抱いているのか。アメリカのスポーツ専門チャンネル『ESPN.com』の人気企画、「5-on-5ディベート」をモデルに、今回は米東海岸に本拠を置く4人の記者に4つの質問をぶつけてみた。

 この「4-on-4」に参加してくれたパネリストの言葉から、日本が誇る怪物王者の現状と、今後の展望が浮かび上がってくる。

【パネリスト】

○ライアン・サンガリア:リングマガジンのライター。フィリピン系アメリカ人で、アジアのボクシングに精通する

○ゲイブ・オッペンハイム:NY拠点のフリーライター。2017年5月の村田諒太(帝拳ジム)対アッサン・エンダム(フランス)戦の際は、来日して現場取材を行なった

○ショーン・ナム:『ハンニバルボクシング』『UCN.com』などで活躍する韓国系アメリカ人ライター。精力的な取材で構築したネットワークによるインサイダー情報に定評がある

○マルコス・ビレガス:『Fight Hub TV』の創始者で、インタビュアー。『FOX』のボクシング中継で非公式ジャッジを務める

Q1 井上対ロドリゲス戦のポイントは?

サンガリア「バンタム級に昇級して以降、井上はまともに被弾したことがない。ロドリゲスが早い段階で、井上が経験したことがない強さのパンチを当て、リスペクトを得られるかどうかがカギになると思う。それができなかった場合、ロドリゲスは厳しくなる。WBSS1回戦のジェイソン・マロニー(オーストラリア)戦ではスタミナ不足も感じただけに、ロドリゲスにとっては特に序盤が大切だ」

オッペンハイム「注目はロドリゲスが井上のパワーに対抗できるかどうかだ」

ビレガス「井上は距離感に優れ、自分のパワーを生かせる位置まで詰めてくる。ロドリゲスにとって大切なのは、相手のパワーが最大限に発揮されない距離にどうにかして身を置くこと。手数を止めず、動き続けることが重要になる。一方の井上は普段どおりに戦えばいい」

ナム「井上はシンプルに、自分らしく戦えば何の問題もない。 ロドリゲスが勝つには、完璧な戦いをするだけでなく、世界最高級の"幸運"が必要になる。具体的には、ロドリゲスは距離を詰めて井上のボディを狙う必要がある。その上でラフファイトに持ち込み、リング上で相手を快適にさせないようにしなくてはならない。それらは難しい作業で、これまでに成し遂げた選手は誰もいない」

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