村田諒太の「価値」はいかほどか。
次戦勝利でゴロフキン戦の現実度

  • 杉浦大介●取材・文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by Yamaguchi Hiroaki/AFLO

 トップランク社の契約選手である村田の試合はESPN系列で放送されてきたこと、ゴロフキン戦はこれまでも話題になってきたこと、世界的なリスペクトを集める本田明彦帝拳ジム会長の傘下選手であることなどから、米リングでも"リョウタ・ムラタ"という名前は認識されている。それどころか、タイトルを持っているときの村田の興行価値は、群雄割拠のミドル級でも上位だと言っていい。

 今後、まずはDAZNが熱望するカネロ対ゴロフキン第3戦の行方がカギになるが、そこでカネロがアンドレイド、あるいは他の選手を対戦相手に選んだ場合、ゴロフキンには違う"ダンスパートナー"が必要になる。その時点で村田が王座を取り戻していれば、日本の元五輪金メダリストはあらためて有力候補に浮上するだろう。トップランク社/ESPNが村田をDAZNにレンタルすることに大きな抵抗を示すとは思えず、交渉は難しくないはずだ。

 繰り返すが、村田にとって、すべては7月12日のブラント戦の結果次第。一度は完敗した相手にリベンジする難しさは並大抵のものではなく、今回は村田に「絶対不利」の予想が出るに違いない。ブラントの充実ぶりを考えれば、母国開催でも日本のヒーローがKO負けを喫してもまったく驚くことではない。しかし、前回は「調整段階で風邪を患った」という村田が、今度こそ万全の体調で臨んでタイトル奪還を果たすことがあれば・・・・・・。

 1試合の結果で評価、商品価値が大きく変動するのがボクシングの世界。信じ難いかもしれないが、村田は依然として"1 win away from a big fight(ビッグファイト到達まであと1勝)"の位置にいる。一度は失いかけたものを取り戻し、日本人としては前人未到の"ミドル級ビッグファイト"の夢を再び描くために、ブラントとのリマッチは村田にとって一世一代の大勝負となる。

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