武藤敬司の復帰戦は長州力の引退試合。「どうなるか。出たとこ勝負」

  • 松岡健治●文 text by Matsuoka Kenji
  • photo by Hiraku Yukio/AFLO

 昨年3月に両膝の人工関節設置手術を行なったプロレスラーの武藤敬司が、6月26日に後楽園ホールで開催される長州力の引退試合「POWER HALL 2019 New Journey Begins」で1年3カ月ぶりに復帰する。

両膝の手術を乗り越えてリングに復帰する武藤敬司両膝の手術を乗り越えてリングに復帰する武藤敬司

 1984年10月5日のデビューから、今回を含めて5度の手術を経験した武藤だが、これほどの長期間に渡りリングを離れたのは初めてだった。

 武藤の必殺技「ムーンサルトプレス(日本名:月面水爆)」の華麗な舞いは、多くのファンを魅了した一方で、両膝をダイレクトにマットに叩きつけてダメージを蓄積する"諸刃の剣"でもあった。両膝を痛めては手術を重ね、日常生活では杖が手放せず、長い距離を歩くときは車イスが必要なほどだった。

 それでも何とかリングに立ち続けたが、ついに痛みが限界に達し、2017年12月に手術を決断した。プロレスを続けるには、人工関節を入れる以外に選択肢はないと判断。その分野で世界的権威である、苑田会人工関節病院の杉本和隆病院長に「人工関節を入れてもプロレスはできます」と背中を押され、手術に踏み切った。

「そろそろ辞め時かなぁって頭をよぎったことは事実だよ。でもね、リングに上がりたい気持ちがオレの中では上回っていたんだ。そこに理由なんかない。ただ、もしあるとすれば、やっぱりプロレスが好きだっていうことだよね。オレの中では"天職"だと思ってやってきた。あの時点で辞めたくなかったし、そうしたら後悔すると思ったからね。プロレスを続けるために、人工関節を入れることを決断したということですよ」

 ただ、手術に際して杉本医師からひとつの宣告を受ける。術後は、膝に大きな負担を強いるムーンサルトプレスを封印することだ。

"スペース・ローンウルフ"と騒がれた若手時代、1990年代初頭のスーパーベビーフェイス時代、UWFインターナショナルとの対抗戦、nWo、全日本プロレス......さらに自身の化身である"グレート・ムタ"としてリングに上がった時も、常にファンを沸かせてきた月面水爆。「さよなら」は苦渋の決断だったが、「プロレスを続けていくための前向きな判断だった」と武藤は明かす。

 昨年3月14日の「WRESTLE-1」後楽園ホール大会では"武藤敬司"として、3月25日の「DDT」両国国技館大会では"グレート・ムタ"として最後のムーンサルトプレスを舞い、愛する必殺技に別れを告げた。

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