実は金欠のパッキャオ、巨額報酬獲得へメイウェザーとの再戦を目指す (2ページ目)

  • 杉浦大介●取材・文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by Getty Images

 1995年にプロボクサーとしてのキャリアをスタートさせたフィリピンの雄は、すでにフライ、スーパーバンタム、スーパーフェザー、ライト、ウェルター、スーパーウェルター級の6階級を制覇。また、タイトルを手にしていないフェザー級ではマルコ・アントニオ・バレラ(メキシコ)、スーパーライト級でもリッキー・ハットン(イギリス)という階級最強と目される選手に勝っているため、「事実上の8階級制覇王者」と呼ばれることも多い。

 その過程で多くのメガファイトの主役を務めており、文字どおり世界的なビッグネームとなった。すでにボクサーとして成し遂げられるほぼすべてを手にしており、引退後のボクシング殿堂入りも確実。フィリピンの国民的な英雄は、2010年には政治家としての活動も本格化させた。

 フィリピンの下院議員を務めた後、引退を発表した直後の2016年5月には上院議員選挙で当選。その後は、ボクサーとしてのキャリアを完全に終了させ、政治活動に専念するのかと思われていたが......。すぐに引退を撤回し、現役を続けている。

 全盛期は過ぎていても、世界トップレベルで戦える力を保っているならば、リングに立ちたくなる気持ちも理解できる。会見や試合での嬉々とした表情を見る限り、パッキャオのボクシング愛、情熱に疑いの余地はない。ただ......現在のパッキャオの最大のモチベーションは金ではないか、という見方があるのも事実だ。

 2015年のフロイド・メイウェザー(アメリカ)との"世紀の一戦"だけで、約1億5000万ドル(約168億円)の報酬を得たパッキャオは、信じがたいことに財政難にあえいでいる。彼の気前のよさ、散財癖はよく知られるところで、アメリカ国内でも多額の税金を滞納し、2016年以降はアメリカ国内での試合が難しくなったのも有名な話。IRS(アメリカ合衆国内国歳入庁)との"何らかの取り決め"により、2年ぶりのラスベガス戦は可能になったが、引退を前に晩節を汚すのも時間の問題だ。

 しかし今後も声がかかる限り、大金が稼げる限り、パッキャオはリングに上がり続けるだろう。その視線の先には、再びのメガイベントが見えてきている。

「(今年9月に)メイウェザーと日本で会った時に、彼は復帰して僕と対戦したいと言ってきた。ブローナーのことは過小評価していない。まずは今回の試合。メイウェザーについて話すのはその先だ」

 11月19日の会見の際にも、ブローナー戦と同等かそれ以上に、メイウェザーとのリマッチが話題に上がっていた。実際にブローナーに勝てば、来年中にもパッキャオとメイウェザーによる"世紀の再戦"の実現が有力視されている。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る