パワハラ問題を乗り越え、伊調馨が復帰。前人未踏の道へ腹をくくった (3ページ目)

  • 宮崎俊哉●取材・文 text by Miyazaki Toshiya
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 伊調を3歳から中学卒業まで指導していた八戸レスリングクラブ・澤内和興会長はこの試合を見て、次のように評価した。

「相手を警戒し過ぎてポイントを許してしまいましたが、すぐにポイントを奪って同点とした。久しぶりの試合なのに、冷静でしたね。後半の動きはよかったです。順調に仕上がっている証拠。これから試合を続けて実戦感覚が戻ってくれば、あのような失点もなくなるんじゃないかな」

 そして、大会最後の試合となった決勝戦。昨年度の全日本社会人選手権で優勝した望月芙早乃(自衛隊)を相手に、伊調は序盤から得点を重ねていった。第2ピリオド30秒過ぎには望月のタックルを落ち着いて返し、一気に抑え込み。8-0からフォールを決めて優勝を飾った。

 全日本選手権の上位選手と比べると発展途上の選手ばかりとはいえ、終わってみれば圧勝、圧勝、圧勝。3試合すべてフォール勝ちで復帰戦を締めくくった。

 伊調が表彰台の中央に上がると、会場に詰めかけたレスリングファン、高校生、中学生、キッズの部に出場した選手たちからは大きな拍手が鳴りやまなかった。

 しかし、復帰戦で結果を残せたとはいえ、伊調は手綱を緩めようとはしない。「まだ甘いなと思いました。構えたとき、攻め込むとき腰が高かったし、前へ前へと出きれなかった。まだまだ練習が足りません」と反省を口にする。ただ最後は、「レスリングをもう1回、再開できたことが自分にとっては幸せ。喜びを感じながらやれた」と締めくくった。

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