レスリング「非至学館」の熱戦に水を差す、栄・谷岡コンビの茶番劇 (2ページ目)

  • 宮崎俊哉●取材・文 text by Miyazaki Toshiya
  • photo by AFLO

 パワハラ問題の影響のひとつとして、世界選手権の代表選考を兼ねた全日本選手権と全日本選抜選手権の優勝者が異なった場合は、女子でも男子同様にプレーオフが行なわれることになった。そのため須崎と入江は今年10月にハンガリーで行なわれる世界選手権の出場権をかけて、7月7日にふたたび激突する。

 世界でもっとも過酷な代表争いを繰り広げた入江と須崎だが、ふたりに共通するのは女子の主流となったレスリングの名門「至学館大」への進学を選ばなかったことだ。

 少年少女大会や中学で活躍した多くの女子選手は、高校から、あるいは大学から至学館へと進学する。吉田沙保里をはじめとするトップ選手と同じ道場で練習することができ、スパーリングパートナーがいくらでもいるからだ。そして指導するのは、協会の強化本部長を務めていた栄和人氏。ところが、入江も須崎も、独自の道を歩んでいる。

 福岡県出身の入江は全国中学生選手権で優勝した後、小倉商業高へ進学。全国高校選手権で2連覇を遂げると、九州共立大へ。一貫して地元を離れず、妹ふたりとともに練習を積み、大学卒業後は自衛隊体育学校へ進んだ。

 須崎は全国少年少女選手権で3度優勝を飾り、JOCエリートアカデミーへ。2015年に入江に敗れるまで中学1年から83連勝をマークして一気に高校生世界チャンピオンまで上り詰めると、今年4月からは父の母校で、姉も通っている早稲田大へと進学した。現在は早稲田大で男子と練習するとともに、アカデミー時代と変わらぬ環境でも稽古している。

 2016年のリオ五輪では、女子6階級すべてを至学館大学生・卒業生が占めた。もし、"非至学館"の選手が東京五輪出場となれば、アテネ、北京、ロンドンと五輪3大会連続出場を果たした浜口京子以来ふたり目となる。

 一方、至学館大勢は昨年の全日本選手権に続き、今大会でも10階級中8階級を制覇。リオ五輪金メダリストの川井梨紗子(ジャパンビバレッジ)が階級を下げながら59キロ級でも圧倒的な強さを見せつけて優勝すると、姉と入れ替わって階級を上げた妹・友香子(至学館大)も62キロ級を制し、姉妹同時優勝を成し遂げた。

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