「女三四郎」×3人。女子柔道52キロ級が大変なことになっている (2ページ目)

  • 柳川悠二●文 text by Yanagawa Yuji
  • 岸本勉●写真 photo by Kishimoto Tsutomu

「私には巴投げしか(武器が)ないとみんなに思われているので、それを打破しようとした時期もあるんですけど、結局、他の技では投げられず、今度は巴投げも掛からなくなるという負の連鎖に陥った。確かに私には巴しかないんですけど、誰にも負けない武器をひとつ持っているということで、今は私の強みだと思っています」

 敗れた志々目は、畳を降りた直後から目を赤くしていた。

「(巴投げを)警戒してしまって、守りに入ってしまって、自分から攻めていけなかった」

 そして、この大会を第2シードで迎えた阿部の快進撃を準決勝で止めたのも角田だった。やはり巴投げで阿部の背を畳につけ、主審の「一本」の声がかかる寸前には阿部の左腕も腕ひしぎ十字固めで極(き)めるという"二本"勝ち。阿部は一昨年のグランドスラム東京でも角田に敗れており、捨て身技である巴投げと腕関節を極めることに長(た)けた角田の柔道に対する苦手意識をこう明かした。

「思い切って自分から技を出したら勝てると思っていたんですけど、どこかに"嫌だな"という気持ちがあったから、この結果になったんだと思います。苦手意識はあるんですけど、ここを超えないと......必ず超えたい」

 大会後に開かれた強化委員会で、9月にアゼルバイジャンのバクーで開催される世界選手権女子52キロ級の代表には、志々目が選出された。

 現世界女王に加え、屈指の実力者に期待の若手が揃う52キロ級は、4月22日の全日本女子柔道選手権大会後に、もうひとりの代表選手が決定することが有力視されている。

 2枠目に飛び込むのは角田か、それとも阿部か。いずれにせよ、三者の中から今年の世界女王は生まれるはずだ。

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