高まる「伊調馨」待望論。
激震の女子レスリング、W杯で露呈した弱点

  • 宮崎俊哉●取材・文 text by Miyazaki Toshiya
  • photo by AFLO

 オリンピック4連覇の偉業を達成した伊調馨(ALSOK)に対し、公益財団法人日本レスリング協会の栄和人強化本部長(至学館大教授・レスリング部監督)が「男子合宿への参加を禁止した」「彼女が師事するコーチへ不当な圧力をかけた」「練習拠点(警視庁レスリングクラブ)への出入りを禁止した」とする告発状が内閣府に提出されたと、3月1日発売の週刊文春が報じて発覚した"女子レスリング・パワハラ"問題――。

パワハラ問題の影響で今年のワールドカップには多くのメディアが駆けつけたパワハラ問題の影響で今年のワールドカップには多くのメディアが駆けつけた レスリング協会はまったく調査をせぬまま、週刊誌発売後、ただちに告発状の内容を全面否定した。しかしその後、倫理委員会が選定した弁護士による第三者委員会を立ち上げ、内閣府の調査とともに関係者への聞き取り調査を行なっている。騒動は連日メディアで報じられているが、いまだ問題は解決していない。

 そんななか、群馬県高崎市で女子レスリング国別団体対抗戦ワールドカップが開催された。

 出場国は昨年の世界選手権で獲得した国別ポイントの上位8ヵ国。女子ワールドカップはこれまで16回行なわれてきたが、日本はすべてに出場し、優勝9回、2位2回、3位5回と常に表彰台に上がり、現在3連覇中である。

 今大会、パワハラ問題の当事者と告発された栄強化本部長は日本代表チームの本部長を務め、大会パンフレットにも写真入りでそう紹介されていた。だが、10日前に体調不良を訴えて本部長を辞退。チームに帯同せず、会場にも姿を見せなかった。

 また、100名以上集まったマスコミに対してレスリング協会は、「会長や副本部長など協会役員へのインタビュー希望は広報へお伝えください。ただし、対応できるかどうかは確約できません。本部席でのインタビューもご遠慮ください。いずれの場合も、インタビューは本大会に関する質問のみを受け付けます。本大会と趣旨の異なる内容の質問はご遠慮ください」との取材注意を配布。「マスコミ全面協力」が伝統のレスリング協会としては、異例のことである。

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