山中×ネリ戦の教訓。ふざけた体重超過ボクサーを、どう懲らしめるか (3ページ目)

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by Getty Images

「ボクシングへのリスペクトが感じられない選手は厳しく取り締まるべきだ」

 フリーライターのゲイブ・オッペンハイム記者のそんな言葉は、この件にうんざりしている気持ちは日本のファンや関係者だけでなく、幅広い"ボクシング・ピープル"の総意であることを表している。

 そこで考えるべきは、「どんな規則を設定するか」だ。

 現状、体重オーバーを実際にやらかしてしまった選手に対しては、試合当日にも追加計量を義務づけ、大幅にリバウンドしないように"監視"するくらいしか対処法がない。体重超過が確信犯かどうかを証明する手立てはなく、健康上の問題も関わってくるだけに、それ以上の抜本的な手は打てないのだ。

 それよりも大事なのは、失敗した際のペナルティをあらかじめ厳しくしておくことだろう。それこそが、もともとウェイトを作る意欲に乏しい選手への抑止力になる。

 具体的な罰則に関して、複数の記者で共通していたのは、「世界タイトル統括団体、ローカルコミッションによる出場停止処分は意味のあるペナルティにはならない」という意見だった。

 ネリにはWBCから無期限出場停止処分が下され、日本での無期限活動停止もJBCから言い渡された。それでも、ネリが他のコミッション管轄興行に出ることは止められないし、WBC以外の世界タイトルに挑むことは依然として不可能ではない。

「こんなことが起こると、『ボクシングにもすべてを統括する組織が存在すれば......』と願わずにはいられなくなる。山中のような誠実なハードワーカーを救い出す術(すべ)があればとも思うよ。しかし、お金を目当てにリングで相手を叩きのめすスポーツには、常に抜け道が存在する。公正を期す統一した動きが統括団体から出てこない限り、似たようなことは引き続き起こるだろう」

 そう警告する『UCN.com』のショーン・ナム記者の言葉通り、MLBやNBAなどとは違い、統一コミッションが不在な点がボクシングにとってのネックとなる。

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