山中×ネリ戦の教訓。ふざけた体重超過
ボクサーを、どう懲らしめるか

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by Getty Images

 対戦者が規定体重を守らなかった場合、試合を取りやめる選択はできる。筆者の記憶にある限り、2006年6月のホセ・ルイス・カスティーヨ(メキシコ)vsディエゴ・コラレス(アメリカ)の第3戦、2016年11月19日にコネチカットで開催予定だった岩佐亮佑(セレス)vsルイス・ロサ(プエルトリコ)などが、その数少ないケースだ。

 ただ、キャンセルしてしまえば報酬も手に入らない。その試合に向けたトレーニングも無駄なものになり、興行的にも大打撃となる。それゆえ、ブローナーvsエスコベド同様、多くのボクサーはボーナス、グローブハンデなどと引き換えに試合を行なうことを選ぶのだ。

 一昨年の岩佐の場合は、タイトルマッチではなく挑戦者決定戦だったこと、中止しても指名挑戦権は確保されることに加え、海外での試合で自前の興行ではなかったため、キャンセルの決断は難しくなかったのかもしれない。

 ただ、ネリへの雪辱を胸に母国での決戦に臨んだ今回の山中には、「試合中止」というオプションは存在しなかった。そんな場合は、体重制競技の概念が半ば無視された形で試合が行なわれ、見ている側も実に居心地の悪い思いをすることになる。

 非常に難しいこの問題に対して、ボクシング界の人間はどう対処すべきなのか。確信犯的に体重超過で臨んでくる選手はどう扱われるべきか。ニューヨークで2つの大興行が開催された3月上旬、筆者は複数の地元ボクシング記者に意見を求めた。

 すると、これは想像できたことだが、誰もが「オーバーウェイト選手に対してこれまでよりも厳しい罰則が必要」と口をそろえた。

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