2018.03.03

元いじめられっ子のボクシング
世界統一王者・田口良一とは何者なのか

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • 写真●山口裕朗 photo by Yamaguchi Hiroaki

統一王者になるまでの道のりと、今後の目標を語る田口――すでに世界タイトルを7度も防衛し、日本では過去に2人しか成し遂げていない統一王者になりました。そこまで上り詰められた理由を自分ではどう考えていますか? 

「自分でもわかりません。継続して地道にやってきたからだと思うんですが……。僕は特にスパーリングが弱くてムラがあるんですよ。周りから『この人は本当に世界王者なんだろうか』と思われてしまうようなスパーもありますし」

――今でもそういうことがありますか? 

「たまにあります。むしろ以前のほうがスパーリングでは強かったかもしれません。最近は自分からガンガンいったりとか、そういう勢いがなくなった気がします。でもそれは、『試合に合わせればいいや』と割り切るようになったからで、スパーでダメでも前より落ち込まなくなりました」

――注目される試合でも、田口選手は平常心で戦っているように感じますが。

「昔は緊張しすぎて、リングインの際に自分の心臓がバクバクしている音が聞こえるほどでした。でも、緊張するとすぐにスタミナが切れてしまうし、いいパフォーマンスができないので、『毎回こんなのは嫌だ』と思うようになりました。僕に比べて、内山さんはいつも平然としていたので、『緊張はないんですか?』と聞いたら、ひと言だけ『俺は大丈夫だ』と。それを機に、適度な緊張感で臨めるようになりました。コンディションをうまく保っていけば、緊張しすぎることはあまりなくなりましたね」

——田口選手はライトフライ級としては長身ですが、リーチというアドバンテージがありながら打ち合いになる試合が多いと思います。それはファンを楽しませたいという思いからですか? 

「プロになったときから、常にお客さんを喜ばせたいという思いはあります。全日本新人王の決勝の試合などは、超満員なのに最初の1ラウンドは会場が静かで。『これは盛り上げなければいけない』と、手数を増やしたということもありましたね」