元いじめられっ子のボクシング世界統一王者・田口良一とは何者なのか (2ページ目)

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • 写真●山口裕朗 photo by Yamaguchi Hiroaki

――初回には危ないと思うシーンがありましたが、実際のダメージは? 

「1ラウンド終盤の左アッパーですよね。ちょっとクラッときましたけど、めちゃくちゃ効いたわけではなかったです。ただ、そのラウンドは完全に取られたなとは思いました。それで、セコンドの人たちだけじゃなくて会場中が『これはやばいんじゃないか』という空気になっていて、インターバル中も『みんなそう思っているんだろうな』と(笑)。だからこそ2ラウンドから切り替えて、ペースを上げていこうと思えたんです」

――ほぼ完勝に見えたので、9ラウンド後にハッパをかけられたという話は少し意外でした。そのように言われたことで驚きはなかったですか? 

「いや、自分でも明確に取ったと感じたラウンドは少なかったですから。それにボクシングには、ときどき『えっ?』っていう採点があるじゃないですか。判定は出てみないとわからないですし、意外な判定が出ると思っておいたほうがいいなと。結果的に最後の3ラウンドをしっかりと取れたわけで、あそこで『勝ってる、勝ってる』と言われていたら、あそこまでは突き放せなかったかもしれません」

――ワタナベジムの先輩で、メリンド戦の解説を務めた内山高志さんは、田口選手の長所を「ボディ打ちのうまさ、打たれ強さ、スタミナ、打ち合いでも引かない気の強さ、後半での強さ」と述べていました。その分析についてどう思いますか?

「自分は特別にパワーがあるわけではないし、スピードもめちゃくちゃ速いわけではないので、一般的には長所はわかりづらいかもしれません。例えば、井上(尚弥)くんははっきりとした長所があって、圧倒的じゃないですか。それに比べて、自分は何が強いのかというと......。ただ、気持ちは強いほうだと思いますし、対戦相手に絶対負けないと思ってやっています。スタミナにも自信があるので、内山さんの分析は的確かなと思います(笑)」

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