あのレスリング女王が衝撃の惨敗。
伊調馨は「早く負けろ」と言っていた

  • 宮崎俊哉●取材・文 text by Miyazaki Toshiya
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 初戦となった準々決勝。本来の動きとはかけ離れていたが、登坂は試合巧者ぶりを発揮する。だが、接戦をモノにして勝利を収めたものの、試合後に指導を受ける母校・至学館大監督の栄和人日本レスリング協会強化本部長から「ここでまたケガをしたら元も子もない。万全の態勢で来年6月の全日本選抜選手権(もうひとつの世界選手権代表選考会)にかけろ!」とストップがかけられた。

 一方、登坂に勝って"真のチャンピオン"になることに執念を燃やしていた須崎にも、思わぬ落とし穴が待ち構えていた。準々決勝を10-0でテクニカルフォール勝ちしたものの、準決勝の入江ゆき(自衛隊体育学校)にまさかの0-10のテクニカルフォール負けを喫してしまったのだ。

「練習が足りないから負けました。相手がうまく、何もさせてもらえませんでした。調整ミスではありません。弱かったから負けた」

 マットから降りた須崎は、アップ場の隅で泣きながら悔しさをあらわにした。

 大会前、伊調馨(ALSOK)はこの結果を予言していたかのように、次のように語っていた。

「パリで行なわれた世界選手権で優勝してから、(須崎は)国体でもワールドカップでも先制点、大量点を許しています。実力的には格下の選手に。やっぱり、世界チャンピオンとして負けられないというのがあるのでしょう。

4 / 6

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る