17歳の柔道女王が宣言「阿部詩の時代を2020年まで続けていく」 (2ページ目)

  • 柳川悠二●文 text by Yanagawa Yuji
  • 中村博之●写真 photo by Nakamura Hiroyuki

 世界女王を相手に際立ったのは、阿部の受けの強さだ。技を仕掛けられても体の軸がぶれず冷静に対処していく。最後は勝負を焦った志々目の内股をすかし、背を畳につけて「技あり」。

「いつも練習していて、(相手の技の)タイミングは結構わかっていた。自然と体が反応しました」

 阿部は試合の直前、口を大きく開けて、畳に上がる。これは兄にも共通する癖だ。決して兄を真似ているわけではないと言うが、緊張をほぐす意味合いがあるのだろう。

 そして、担ぎ技を得意とする豪快な柔道もまた兄譲りだ。襟を掴めば背負い投げ、たとえ襟が掴めなくても袖を持って袖釣り込み腰で相手を畳に叩きつける。組み際に瞬時に、相手の懐に入り込む瞬発力もまた兄に通じる。たとえポイントでリードしても逃げる姿勢は見せず、とにかく見ていて楽しい柔道に徹する。

「自分の柔道は『一本を取りにく柔道』。担ぎ技にこだわっているつもりはあまりないんですけど......とにかく、いろんな技で投げたい。みんなが驚く、みんなが沸くのは担いで投げることかなと思っているので、そこにはこだわっています」

 相手が研究する中で、技を仕掛けるタイミングに変化をつけ、またあらゆる角度から担ぎ技に入るために相手がいくら警戒していても対応できない。

 準決勝のアマンディーヌ・ブシャール(フランス)戦では投げ技と寝技でふたつの「技あり」を奪い、決勝の立川莉奈(福岡大3年)戦は開始46秒に一本背負いのような担ぎ技で見事な一本勝ち。ゴールデンスコアまでもつれた試合もあったが、完勝といっていい5試合だった。

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