17歳の柔道女王が宣言
「阿部詩の時代を2020年まで続けていく」

  • 柳川悠二●文 text by Yanagawa Yuji
  • 中村博之●写真 photo by Nakamura Hiroyuki

 それまで愛くるしい笑顔に溢れていた柔道界のニューヒロインが、3年後の東京五輪に向けた質問が飛ぶと、威風堂々たる表情に一変した。

「ここから阿部詩の時代を、2020年まで続けていきたいと思います」

兄の一二三と同様、17歳でクランドスラム東京を制した阿部詩(写真右)兄の一二三と同様、17歳でクランドスラム東京を制した阿部詩(写真右) 11月の講道館杯女子52kg級を制している夙川学院(兵庫)2年の阿部詩(あべ・うた)は、12月2日のグランドスラム東京でも格上の強豪を圧倒し、3年前に兄・一二三(ひふみ)が成し遂げた快挙と同様、17歳という若さで金メダリストとなった。

「お兄ちゃんも(201411月の)講道館杯を高2で優勝して、そこから(12月の)グランドスラム東京も優勝した。その立場には絶対になりたいとは思っていました。この大会は本当に優勝したかったんで、ホッとしています」

 日本の女子52kg級は、今年のブダペスト世界選手権で金メダリストとなった志々目愛(ししめ・あい)、銀メダリストの角田夏実らがひしめく、世界よりも国内を勝ち抜くことのほうが明らかに困難な階級だ。

 もしこの大会で志々目が優勝すれば、来年のアゼルバイジャン・バクーで行なわれる世界選手権の代表が内定するため、阿部にとっては初めての世界選手権切符を手にするためにも負けられない大会といえた。

 初戦を袖釣り込み腰「一本」で、2回戦を背負い投げ「技あり」で勝ち上がった阿部は、準々決勝で志々目と対戦した。「絶対に勝たないといけない人だった」と志々目戦を振り返る。

「この試合をどう乗り越えるかが、この大会の一番のテーマだった。一本は獲れなかったけど、今の自分が実力を出せたと思います」

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