村田諒太らチャンプが輩出。京都廣学館ボクシング部が育む「拳の哲学」 (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文・撮影 text by Uchida Akatsuki

 それら偉大なる先輩たちの汗や息吹が染み込むジム内の壁には、彼らの活躍を報じる新聞の切り抜きや、タイトルマッチのポスターなどが貼られていた。ギラギラと光る眼光にカラフルなボクサーショーツ、そして金色のチャンピオンベルト――。色鮮やかな写真やポスターが壁一面に貼られるなかで、ただ一転、重厚な存在感を示す額縁入りの男性の写真がかけられた、ひたすらに静謐(せいひつ)な空間があった。

 武元前川(たけもと・まえかわ)――。4年前に急逝した前監督こそが、村田らが今も「恩師」と呼んで慕う、同校ボクシング部伝統の創始者だ。

「ここは、自分の恩師でもある武元先生が築き上げられたボクシング部。今、活躍している村田や山中、久保に大森将平(元日本バンタム級王者)、向井寛史(むかい・ひろふみ/元WBOアジア太平洋スーパーフライ級王者)......彼らの今があるのは、武元先生の存在があったからです」

 僕、実はスパルタは苦手なんですよ......練習が終わると、それまでの厳しい表情から一転。人のよさが目尻からこぼれ落ちるほどに、温厚な表情になって西嶋先生が言う。

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