村田諒太、先があるから「泣いてません」。視線の先は最強ゴロフキン (3ページ目)

  • 水野光博●取材・文 text by Mizuno Mitsuhiro
  • photo by AFLO

「嬉しいときは泣くの。悔しいときに泣くのは偽物」

 半年後、今度は嬉し涙を村田が流した。

 しかし、勝利者インタビューで「初めて泣いている姿を見ました」とのリングアナの言葉に、赤い目をした村田は「泣いていません」と答えた。具志堅会長の言葉を借りるまでもなく、「泣いた」と言っていいはずだ。だが、村田がそう言わないわけが、すぐにわかる。

 村田はリング上で、まず「今回の試合のTシャツを買ってくれた方もいるかと思うんですけど、(胸部のロゴ)"Make This Ours"、みなさんで作った勝利です。ありがとうございます」と、ファンに感謝の言葉を述べ、こう続けた。

「高校の恩師が言っていたんですが、ボクシングは相手を踏みにじって、その上に自分が立つ。だから勝つ人間は、その責任が伴うんだと言われました。彼の分の責任を伴って、これからも戦いたい」

 日本人が世界ミドル級王座を獲得するのは、1995年の竹原慎二以来ふたり目。その快挙に酔いしれるだけでよかったはずのこの夜、村田の視線はすでにその先を見据えていた。だから、「泣いていません」と答えた。

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