リングを去る心優しき王者・内山高志。
笑ってさよなら、涙はいらない

  • 水野光博●取材・文 text by Mizuno Mitsuhiro
  • photo by AFLO

 まごうことなき稀代のスーパーチャンピオンは、会見の最後に名言を残すことも、会場に詰めかけた記者たちを涙させることもできただろう。

 しかし、心優しきハードパンチャーは、そうはしなかった。会見場が、しみったれた空気になりそうなのを察したか、最後の質問で今後について聞かれると、笑いながらこう答えた。

「とりあえず、のんびりと猫カフェでもやろうかと(笑)」

 誰よりも笑顔と、KOと、チャンピオンベルトが似合う男がリングを去った。

 笑ってさよなら。涙はいらない。

 内山高志が刻んだ記録も、記憶も、簡単に消せはしない。それどころか、チャンピオンが何よりも大切にしたファンの胸のなかに、その豪拳の残像は永遠に残るはずだから......。

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