2017.05.01

【国際プロレス伝】語り草となった
「田園コロシアム・こんばんは事件」

  • 宮崎俊哉●取材・文 text by Miyazaki Toshiya
  • photo by AFLO

 9月23日の秋分の日、会場には1万3000人を超す大観衆が詰めかけ、全国ネットのテレビ中継もあった。カードは、藤波辰爾とタイガーマスクがメキシコのマスクマンと対戦。セミファイナルには日本のプロレス史上最強の外国人戦「アンドレ・ザ・ジャイアントvsスタン・ハンセン」の激突も行なわれた。

「異常な雰囲気でしたね。まさに、空前絶後のド迫力マッチ。アンドレとハンセンが戦うのですから。熱狂したファンの拍手、歓声、どよめきが飛び交って、見ていた僕も圧倒され、身体が震えたのを今でも覚えています。その一方で、僕たちは潰れた会社の人間ですから、みじめな想いも抱いていてね。

 そんな試合の後、僕と木村さんが敵のリングに上がったんです。メインで戦うタイガー戸口選手とアントニオ猪木さんがいました。山本小鉄さんもいたな。

 リングアナが木村さんにマイクを渡したんです。そうしたら、木村さんの第一声が、『こんばんは』。会場からドッと笑いが起こりました。失笑です。当たり前ですよ。普通は啖呵(たんか)を切って、猪木さんに殴りかかって、蹴っ飛ばして、マットにねじ伏せて、『ぶっ殺してやる』とやってもいいところでしたから。でも、木村さんはそうしなかった」