伊調馨が語るリオ五輪の裏側。「4試合とも最低、全部やり直したい」 (4ページ目)

  • 宮崎俊哉●取材・文 text by Miyazaki Toshiya
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 私はというと、なんとなく審判が手を上げている素振りが見えていたから、2点入って3-2の逆転だと思ったけど......。ずっとダメダメだったから、最後ぐらいはしっかり倒したかった。相手の腕を極(き)めていたので、倒せて当然なんですけど、それすらできなかった。それで自分に『イラッ!』。試合が終わって審判に手を上げてもらっているときは、そんな気持ちでした」

 大会前、「3連覇のときとは比べものにならないプレッシャーに襲われるのではないか。32歳という年齢がどう影響するのか。亡くなった母に金メダルを見せたいと気負(きお)わないか」と心配していた姉は、「カオリン(馨)には4連覇よりも、リオデジャネイロオリンピックを思い切り楽しんでほしい」と願っていた。しかし、伊調自身としては「リオは一番おもしろくない大会」となってしまった。

「治安の問題があったから選手村と会場の往復だけで、まったく出歩けなかったし。よかったのは、レベルの高い男子の試合を観戦できたことぐらい。目の前で樋口黎選手(ひぐち・れい/男子フリースタイル57キロ級)の銀メダルも観られました。

 でも、やっぱり最低。やり直したいです。決勝戦はもちろん、1回戦のチュニジアのマルワ・アマリ選手(11-0テクニカルフォール勝ち)とも、2回戦のトルコのエリフ・ジャレ・エシリルマク選手(3-1判定勝ち)とも、準決勝のアゼルバイジャンのユリア・ラトケビッチ選手(10-0テクニカルフォール勝ち)とも。4人全員と、もう一度戦いたい。もしかすると、どこかで負けるかもしれないですけど......いや、絶対にもっといい試合をします」

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