「物語」は終わらない。37歳のマニー・パッキャオが復帰を決めた理由 (3ページ目)

　しかし、６Ｒ・２分59秒、パッキャオは被弾――。意識を寸断され、前のめりにリングに沈み、ノックアウト負けを喫した。

　試合から１週間後、パッキャオとボボイは故郷フィリピンへ帰る飛行機のなかにいた。

「フィリピンの人たちに合わせる顔なんてない......」

　その悲痛な表情を、NHKのドキュメンタリー番組が映していた。

　失意のまま、ミンダナオ島に着き、故郷の町へと向かう一団。町に近づくにつれ、沿道にポツポツと住人の姿が現れ始める。その数は町に近づくにつれて膨れ上がり、最後は鈴なりとなった。負けはした。だが、勇敢に島民のために戦った英雄の帰還を聞きつけた住民たちが、「ありがとう！　ありがとう！」と大合唱でパッキャオを出迎えたのだ。

　大歓声に包まれたパッキャオは言った。

「俺が国を支え、背負っていると思っていた。支えられていたのは、俺のほうだった......」

　前置きが長くなった。

　今年４月９日のティモシー・ブラッドリー（アメリカ）戦を最後に引退したパッキャオの復帰――。11月５日（日本時間11月６日）、新たな物語が紡（つむ）がれる。