「あきらめない男」が殴り勝って3階級制覇。その名は、長谷川穂積 (2ページ目)

  • 水野光博●取材・文 text by Mizuno Mitsuhiro
  • photo by Nikkan sports/AFLO

 この試合、長谷川の判定勝ち。勝利者インタビューで、「素晴らしい勝利でした! 次につながりますね!」とハイテンションのリングアナ。淡々と、「劣化したんじゃないですか」と自嘲気味に語る長谷川。両者の温度差に、どこまでも噛み合わないインタビューが続いた。

 肩を落とし、リングを降りる長谷川。いったい勝者は誰なのか? この試合が、現役最後の試合になるかもしれないと思えてならなかった。

 だが、長谷川はふたたびリングに立った。

 今年7月、WBC世界スーパーバンタム級王者のウーゴ・ルイス(メキシコ)への挑戦が決定。長谷川は、「ラストチャレンジだと思っている。悔いのない試合、最後、笑って終われるようなボクシングをしたい」と会見で語る。そして、キャリアで初めて公言した。

「負けたら引退」

 チャンピオンベルトをかけた、この試合こそが、かつて10度の防衛に成功した英雄の死に場所にふさわしく思えた。

 それを多くのファンも察知したのか、チケットは即刻完売。プログラム的には山中慎介の防衛戦がメインイベントだが、心のなかでは長谷川のラストダンスをメインに据え、会場を訪れたファンも多かったはず。

 9月16日、エディオンアリーナ大阪。詰めかけた観客は、満員の6500人。大歓声に包まれ、ラストダンスのゴングは鳴った。

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