樋口黎、レスリング男子32年ぶりの学生「銀」。4年後に希望の光 (3ページ目)

  • 宮崎俊哉●取材・文 text by Miyazaki Toshiya
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 決勝の相手は、昨年の世界選手権覇者で、現在世界ランキング1位のウラジーミル・キンチェガシビリ(ジョージア)。それでも樋口は、最強王者を相手に一歩も引かなかった。

 片足タックルを連発して攻め続けると、世界チャンピオンは防戦一方に。キンチェガシビリは消極性から30秒ルールを取られ、樋口が1点を奪取する。1−0で迎えた第2ピリオドに入っても、樋口は片足タックルから相手の身体を返して2点追加。王者相手に3−0とリードした。

 しかし終盤、キンチェガシビリが逆襲に転じる。がぶり返しで2点を奪い返すと、今度は樋口が30秒ルールを取られて1点を献上。最後の最後で3−3となる。イーブンとなった場合は、最後に得点したキンチェガシビリの勝利となる。樋口は残り時間、必死に最後の攻撃を試みた。

 樋口の攻撃を警戒するあまり、キンチェガシビリは終始相手の指を握って放さず、「技術回避」をしてくる。そして、試合はタイムアップ。日本サイドは審議のチャレンジを要求したが、ビデオ判定の結果、その主張は認められずにペナルティとして1点を取られ、3−4で惜敗した。

 金メダルには、あと一歩届かなかった。しかし、堂々の銀メダル。それでも、樋口は満足しなかった。表彰式でメダルをかけられると、一瞬、左手で両目を押さえたが、ニコリともせず、涙も見せず。淡々と表彰台を降り、次のように語った。

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