吉田沙保里、4連覇ならず。「時代」は妹分たちへと引き継がれる (2ページ目)

  • 宮崎俊哉●取材・文 text by Miyazaki Toshiya
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 リオまでの吉田は、優勝して「世界V16」を遂げたものの苦戦した昨年の世界選手権の教訓を活かし、徹底してガードを磨いてきた。同時に、「打倒・吉田」を目指す各国から研究され尽くした"伝家の宝刀"の高速両足タックルが入りづらくなっていることを補うため、投げ技やグレコローマンスタイルのように組んでからの戦い方を磨いてきた。そうした練習の成果は、リオでも確実に発揮された。

 大会初戦となったナタリア・シニシン(アゼルバイジャン)には、崩してからの片足タックルなどで4-0のシャットアウト。続く第2試合、2016年・アフリカ選手権優勝のイザベル・サンブ(セネガル)には、組んだ状態からバックに回って返し技3連発などで9-0と圧勝。さらに準決勝でも、五輪直前の大会から順調な仕上がりを見せているベツァベス・アルゲリョ(ベネズエラ)に片足タックルを決める一方、相手がタックルに入ってきたところもバックに回って6-0。3試合失点ゼロで決勝戦へと駒を進めた。

 あと1勝すれば、前日の58キロ級・伊調馨に続いてオリンピック4連覇達成の夢が叶う。ところが、好事魔多し。第1ピリオド、対戦相手のヘレン・マルーリス(アメリカ)の消極性から30秒ルールで1点を奪取し、1-0のまま試合は進む。しかし第2ピリオド後半、吉田が首投げを打ちにいったところを逆にバックに回られて2失点。さらに、ハルーリスが圧力をかけ続けると後退し、ゾーン際でまたしてもバックを取られて2点を奪われる。

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