伊調馨の目にも涙。姉も案じた「4連覇・年齢・母」の葛藤を超えて (4ページ目)

  • 宮崎俊哉●取材・文 text by Miyazaki Toshiya
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 所属するALSOKの大橋正教監督は、「伊調馨のレスリング人生で、一番ヘタクソな試合。人間、プレッシャーであそこまで動けなくなるものか。それでも最後まであきらめず、勝って4連覇を決めるところはさすが。100年にひとりの選手です」と大絶賛。千春は、「最後、きっちり取るのがカオリンらしさ。相手を押さえてバックに回れたのは、ここまで支えてくれたみなさんのお力です」と感謝を述べた。

 試合後、これまで涙とは無縁だった伊調は目を真っ赤にして、家族と、そしてお世話になった人々と抱き合った。「最後はお母さんが助けてくれました。マットに感謝です」と語り、表彰台ではとびっきりの"カオリン・スマイル"を披露。かつてない最高の笑顔で、4連覇を達成したリオ五輪を締めくくった。

 一方、初出場組の登坂と土性も、最後まであきらめずに攻め抜いて、金メダルをもぎ取った。

 軽量級の登坂だけでなく、重量級の土性も、最大の武器はタックル。この日もふたりは、得意のタックルを炸裂させた。また、タックルを警戒する相手にはそれを見せ球にしてグラウンド技を仕掛け、投げ技で退けていった。

 その武器を授けたのは、「タックルを制する者が世界を制する」を信条とする吉田栄勝(えいかつ)氏。吉田沙保里の父である。

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