2016.08.18

伊調馨の目にも涙。姉も案じた
「4連覇・年齢・母」の葛藤を超えて

  • 宮崎俊哉●取材・文 text by Miyazaki Toshiya
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

終了間際に相手からポイントを奪って逆転勝利を飾った登坂絵莉 第1試合、アフリカ選手権を8度制覇したマルワ・アマリ(チュニジア)には格の違いを見せつけるように、11-0のテクニカルフォール勝ち。続く第2試合は、間合いを詰めて組むことに徹してきたエリフ・ジャレ・エシリルマク(トルコ)に攻めあぐねながらも、3-1の判定勝ちで危なげなし。そして準決勝でも、ロンドン五輪55キロ級・銅メダリストのユリア・ラトケビッチ(アゼルバイジャン)に10-0のテクニカルフォール勝ちを収めた伊調は、ほぼ金メダルを手にしたかと思われた。

 ところが決勝戦は、予想外の大苦戦となった。相手は、北京五輪前に吉田沙保里の連勝記録をストップさせ、その名を世界に轟(とどろ)かせたワレリア・ジョロボワ(ロシア)。2014年の世界選手権・決勝で伊調がテクニカルフォール勝ちしている相手とはいえ、第1ピリオドはプレッシャーからか身体が動かずに1-2とリードを奪われると、第2ピリオドも攻め込めぬまま、時間だけが過ぎていった。

「第2ピリオド後半、カオリンの試合で初めて、『もしかして、負けるのかも……』と、最悪の事態が頭をよぎりました」

 姉の千春は、そう思ったという。

 だが、”絶対女王”は最後に力を振り絞った。試合終了間際、タックルに入ってきた相手を「最後のチャンス」と思って攻め、バックを取って2点を奪取。見事、3-2で劇的な逆転勝利を遂げた。