長与千種が新団体マーベラスを旗揚げ。愛弟子・彩羽匠に託す思い (2ページ目)

  • 尾崎ムギ子●文・写真 text&photo by Ozaki Mugiko

 彩羽がプロレスと出会ったのは、高校生のときだ。

「パソコンを使う授業で、You Tubeを開いたら、ちょうど北斗晶さんと神取忍さんの試合がトップに出てきたんです。そこでプロレスというものを初めて見て、怖いけど、ドラマがあるんだなと思いました。プロレスってこういうことなんだと思って、そこからプロレスにのめり込んでいきました」

 北斗晶でもなく、神取忍でもなく、長与千種に惹かれたのはなぜかと聞くと、「考えたことなかったですけど......」と言い淀んだ後、こう言った。

「長与さんを見て、プロレスラーになりたいと思いました」

 彼女は力強い言葉と、意志を持っていた。

 プロレスに出会う前の彩羽は、人に興味がない、テレビにも興味がない、冷めた子どもだった。それがプロレスに出会ってから、クラスでプロレスごっこをするようになり、みんなに「プロレスが好き」だとアピールするようになった。学校にDVDレコーダーを持参して、授業中も昼休み中も、ずっと長与の映像を見た。初めて、熱くなれるものを見つけた。
 
 憧れの長与に初めて会ったのは、大学生のときだ。剣道部だった彩羽が国体ベスト16に入った褒美に、母親が長与の経営する店に連れていってくれた。母は長与に会えば気持ちが落ち着いて、また剣道に専念するだろうと思ったのだ。しかし、そこからさらに火がついた。「心が火事でした」と彩羽は笑う。

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