ありがとう天龍源一郎。生ける伝説~引退まで53年の格闘家人生 (3ページ目)

  • 佐瀬順一●取材・文・写真 text & photo by Sase Junichi

 しかし、引退する理由は決してコンディションの悪化ではない。まだまだできる、というプライドも当然ある。しかし天龍は、「今年の正月に家内が大病して、天龍源一郎が元気なうちにしか彼女を支えていけないなという気持ちが芽生えた。もうそろそろ、天龍源一郎は腹いっぱいプロレスをやらせてもらったし、これからは俺が恩返ししなければいけないなと思ったのがキッカケ」と語り、引退を決意した。

 長年、陰で支えてくれた奥さんのためなら、プロレスラーとしてのプライドも捨てる……。愛妻家として知られる、実に天龍らしい話だ。しかも天龍は、最後の最後まで“天龍源一郎らしさ”を崩さなかった。なんと引退試合の相手に、現在のプロレス界で間違いなくトップのひとりと言っていい、新日本プロレスの“レインメーカー”オカダ・カズチカを指名したのだ。しかも、一騎打ちで。

 なぜ天龍は、オカダを指名したのか――。その理由は、オカダが2年連続でプロレス大賞のMVPを受賞した際、過去に連続でMVPを受賞したことがある猪木、鶴田、そして天龍に対して、「その3人には僕と同じ時代じゃなくてよかったな、と(思ってほしい)。同じ時代だったら、その3人にはそんな記録はできていないと思いますので。僕よりもだいぶ前の時代に、そういう記録が獲れたことを、僕に感謝してもらいたいですね」と発言したからだという。

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