新たな戦いの始まり。山中慎介の「最終章」が幕を開ける (4ページ目)

  • 水野光博●取材・文 text by Mizuno Mitsuhiro  photo by AFLO

 10ラウンド、脳裏には9ラウンドの被弾がよぎったはず。それでも山中は、声援に押されるように前に出る。そして、ついに左ストレートが挑戦者をとらえ、今度はモレノがぐらつく。

 あとは、もはやカオス。山中は前進を続け、モレノはそれをかわし、いなし続けて11〜12ラウンドを終えた。判定は2−1(113−115、115−113、115−113)。わずかな差で山中が勝利した。

 試合後、帝拳ジムの本田会長は、次戦でWBA世界バンタム級スーパー王者のファン・カルロス・パヤノ(ドミニカ共和国)との統一戦を軸に交渉を進める意向を発表。山中のアメリカ進出へ本腰を入れるつもりだ。

 9度目の防衛に成功した山中は胸を張った。

「最後までパンチが当たらない苦しい戦いだった。内容は満足いかないが、勝ったので次がある。期待しといてください」

 戦いの終わりは、新たな戦いの始まり――。この夜、山中慎介のボクシング人生・最終章が幕を開けた。

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