【ボクシング】荷物番だった内山高志を変身させた「大学1年の夏」 (3ページ目)

  • 水野光博●取材・文 text by Mizuno Mitsuhiro

Uchiyama TakashiUchiyama Takashi 内山はほぼ毎日、先輩の練習相手に指名された。練習相手と言えば聞こえはいいが、ようはサンドバック代わり。有望選手にもしものことがあってはいけないため、練習相手には戦力外の部員が適任だった。内山は毎日、練習が開始する5時の時報が聞こえると、「先輩、風邪で休んでねーかな」と滅入った。

 試合前は練習相手、試合がある日、内山が任されたのは荷物番だ。戦うこともなければ、部員に声援を送るでもない。ただただ、部員たちの荷物に囲まれ、体育座りをしていた。1年生がみな、荷物番なら何も思わなかっただろう。しかし、「俺以外の同級生はリング上で戦っているのに......」と思った瞬間、内山の中で何かが弾け、心の底から思った。

「強くなりたい」

 もちろん、そう思うだけで、レギュラーと荷物番の序列をひっくり返すことはできない。そもそも、1年生の内山は、練習中にリングを使用することすらままならなかった。

「主要選手がリングを使って練習するんで、僕なんかがリングに上がってミット打ちなんてできないわけです。なので、ひとりでサンドバックを打っていました。毎日、全力で10ラウンド以上。それも一発、一発を思いっきり。そうしたら、だんだん、だんだんパワーがついていったんです」

 戦力外のためリングが使えず、サンドバックを殴る日々......。それが、『ノックアウト・ダイナマイト』の原点だった。

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