長いトンネルを抜けたベテランたち。柔道ニッポンへ復活の兆し (4ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 中村博之●写真 photo by Nakamura Hiroyuki

 それ以降は国際大会に出場せずこの試合にかけてきたが、その思いを1回戦から出した。昨年の講道館杯3位の吉田惟人(神奈川県警)を相手に開始13秒に背負い投げて有効を奪うと、その後も攻め続けて相手に指導を2回受けさせ、3分34秒には袖釣り込み腰で1本勝ちした。

 一方昨年、高校2年で講道館杯とGS東京を制して注目されていた阿部は1回戦、相手の厳しい組み手に苦戦しながらも、指導2で優勢勝ちという結果に。そして海老沼への挑戦権を争う準決勝の高市戦では、序盤から釣り手で背中を取られて頭を下げられ、自分の柔道が出来ない展開になった。そして開始1分10秒には両者倒れてもつれ合った時に後ろ袈裟固めを決められる。両足をはね上げて逃れようとしたが、結局そのまま20秒が経過して1本負けを喫した。

「準決勝は組み手争いに負けてしまい、倒れ込んだ時に締め技にいこうとして入れた腕を取られて返され、不用意な形で寝技に持ち込まれてしまった。今までは相手との距離を詰めてパワー勝負をしていたが、今日は釣り手を落されて距離を作られてしまった。ガツガツ前に出るだけではなく、もっと技術の幅を広げていかなければいけないと思った」

「絶対に勝とうと思っていたので悔しい」と話す阿部は、「世界選手権はダメだと思うが、まだリオはあるので諦めずに一からやっていきたい」と話した。

 そんな戦いを尻目に、準決勝も圧勝した海老沼は、決勝で果敢に攻めてくる高市を相手にしても勢いを衰えさせなかった。1分17秒過ぎに一本背負いを仕掛けると、その20秒後には内股を仕掛け、そこから腰車に移行して有効を奪った。その後は両者の投げの打ち合いから倒れ込んで逆に押さえ込みに入られたが、8秒で何とか逃げきるスリリングな展開になった。

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