ボクシング新時代。世界に最も近いプロ4戦の「19歳コンビ」

  • 原 功●文 text by Hara Isao  photo by AFLO

 田中について井上は、「まったく気にしていない。僕のライバルは兄(尚弥)」と、同い年のライバルは眼中にないといった様子だが、まったく意識していないはずはなかろう。このふたりは高校時代に全国大会で5度対戦し、田中が3勝2敗とリードしているのだ。

 ちなみに田中の兄と、井上の兄も高校時代のライバルで、こちらは井上尚弥が5戦全勝を収めている。また。ふたりが所属するジムの会長も元世界王者同士で、強気のマッチメークで知られている。こうした背景も含めると、田中と井上が「宿命のライバル」と見られるのは仕方のないことだろう。

 ミニマム級の田中はスピードを生かした右のボクサーファイター型で、相手の出端に合わせて右のカウンターで仕留めるなど、勘の良さに定評がある。東洋太平洋王座を獲得した原との試合では、シーソーゲームの中で右アッパーを好打してチャンスを作り、最後は右を決めてレフェリーストップに持ち込んだ。この試合は、昨年の国内戦最高試合に選ばれており、田中自身も年間新鋭賞を獲得している。

 勝負勘に加え、窮地にも動じない度胸も備わっており、耐久力やスタミナなど十分に試されていない面はあるものの、原との試合を見るかぎり大きな問題があるようには思えなかった。今年の4月か5月にはプロ5戦目でミニマム級での世界挑戦が計画されており、それに勝てば井上尚弥の持つ国内最速「6戦目」を更新することになる。

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