【ボクシング】長谷川穂積インタビュー「俺は、俺に勝ちたい」 (4ページ目)

  • 水野光博●構成・文 text by Mizuno Mitsuhiro 作田祥一●撮影 photo by Sakuta Shoichi

――その決断に勝敗は関与しない?

長谷川 そうですね。もちろん、負けたらやめます。これ以上、続ける自信はまずないので。勝っても、そういうことです。だから、最後だと思ってやるんです。この先のことを考えず、この試合にすべてをかけ、勝っても、負けても、やり切って終えるだけ……。だから、今までの試合で一番、楽なんです。

――先のことは、次戦を終えたらすべてが決まると。

長谷川 そうですね。次のステップ、次の人生に進むための試合です。(2011年4月、WBC世界フェザー級初防衛戦の)ジョニー・ゴンサレスに負けたままでは、中途半端すぎて次の人生に進めなかった。不甲斐なさすぎたので。負け方とかじゃなくて、心情として。

――引退について誰かに相談されましたか?

長谷川 してないです。家族には伝えてますけど。会長はこの記事を読んだらビックリするんじゃないですか。でも、いいんです。決めるのは、俺。俺はこの試合を気持ちよく終え、(やめると決断すれば)やめようと思っていますから。中途半端で続けるのが、自分にも、ボクシングにも一番失礼ですから。

フェザー級王者になった試合で、
俺のボクシング人生は終わった

――3年前、ゴンサレスに敗れてベルトを失った後、東日本大震災の被災地を慰問し、被災者の方々に再びベルトを獲ることを約束されていますよね。

長谷川 その約束を果たしたいって言うと、その人たちのために闘っているみたいでイヤなんです。おこがましい。ただ、俺は俺のために闘うので、結果として約束を果たせたらいいなと思っています。俺は、俺が満足するために闘います。それでも応援してくれるなら、ともに闘ってほしいなと思います。

――なるほど。現役最後となるかもしれない試合に臨むにあたって、寂しさはありませんか?

長谷川 寂しくはないですね。母親が亡くなった後、フェザー級の王者になった試合で、俺の中で、俺のボクシング人生は終わったんです。今も、その気持ちは変わらない。あそこで、自分のボクシング人生の歩むべき道は走り切った。言い方は難しいですけど、今はオマケです。だから寂しくもないし、ケガなく試合を迎え、すべてを出し切り、事故なく試合を終えたい……。それだけです。

――振り返るのは早すぎませんか。日本歴代2位となる世界王座10度防衛、飛び級での2階級制覇。キャリアを振り返って、「長谷川穂積」というボクサーをもっと褒めてあげてもいいと思いませんか?

長谷川 思いたいですけど、思えませんね。俺は一生懸命やって来ただけなんで。ホンマに自分が好きでやってきただけ。その中でたまたま、いろいろな物を手に入れただけですから。

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